脳内メモ

2022年1月19日

私はジェンダーギャップの問題に強い関心がある。そんなことを宣言することに何の意味があるのかと疑問に思われるかもしれない。それでも私は宣言したい。私はこれまでも今もジェンダーギャップの是正のために声を上げる人たちに励まされてきた。今度は私が励ます側になりたい。自分が関心のあることを発信することで、仲間ができ、情報が集まり、行動しやすくなることも経験上知っている。だから私は宣言する。

「女性であることでなにか不利益を被ったことがあるのか?」と問われた時、答えに詰まった。「ある」と思うのだけれど、具体的な話が上手くできない。

それは私自身がその問題に蓋をしてきたからだと思う。自分が女性であることはキャリアにおいて無関係だと強く思うようにしてきた。仕事において、女性であることを言い訳にはしたくない。一人の弁護士として、仕事で正当に評価されたかった。そこに性別は関係ないと思った。

不利益を訴えることで、使いづらい、と思われたくなかった。ジェンダーの問題を声高に叫ぶことで、煙たがられることも避けたかった。

中高女子校で、女子しかいない環境で6年間を過ごした。大学に入学したとき、あまりの男子の多さに衝撃を受けた。教室の8割が男性で、自分がマイノリティであることを強烈に意識した。

司法試験の勉強を始めたとき、女子が弁護士になってもモテない、結婚出来なくなるよと言われた。試験の成績が良いと、女のくせに、と言われた。とてつもなく悔しかった。

何より、自分自身、朝から晩まで勉強して、目標に向かって努力をすることで、自分は幸せから遠ざかっているんじゃないかという漠とした不安から逃れられなかった。そんな不安を抱えるダサい自分が嫌だった。

24歳で就職活動をしていたとき、私は西村あさひで働きたかった。企業法務の世界で一流の弁護士になりたかった。先輩弁護士から、女性がそんなハードワークをするもんじゃない、子供が産まれたらどうするんだと言われた。私は30代で留学に行きたかったし子供も欲しかった。何と答えたらいいかは分からなかった。

これらはただの私の個人的な話だと思っていた。私が自分が女性であること、結婚や出産を意識しすぎているせいで悩むのだと。あるいはただたまたま、私が少し目立つせいで、余計に嫌なことを言われたりするんだと。

31歳になったいま、私はアメリカのロースクールにいる。教室の半数以上は女性だ。対して、日本のジェンダーギャップ指数は世界156ヵ国中の120位。経済社会でも、政治の世界でも、女性のリーダーは極めて少ない。

ずっとジェンダーの問題を口に出すことを避けてきた。でも、これは私自身の個人の問題というだけでなく、社会の問題でもあるとの想いが今は強い。